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【タイ通が教える】観光客のいないバンコクの歩き方6選

朝一のドンムアン空港

かつてこの街に暮らし、屋台から漂うスパイスの香りを日常として過ごした私にとって、バンコクは単なる観光地ではありません。

第2の故郷であり、何度歩いても新しい顔を見せてくれる、底知れない迷宮のような場所でした。

在住中、私は休日になるたびに地図を広げ、日本人が一人もいないような路地裏や、ローカルな人々だけが集まる古いコミュニティを歩き回りました。

そこで目にしたのは、有名な王宮の黄金の輝きとはまた違う、静かで、泥臭く、それでいて驚くほど鮮やかな「生のタイ」でした。

定番のスポットを一通り巡り終えた旅行者の方から、よくこんな相談を受けます。

「もっとディープで、日本人に出会わないような場所はない?」と。

確かに、今のバンコクは便利になり、どこへ行っても日本語の案内や日本人観光客の姿を目にします。

それは安心感ではありますが、旅が持つ「異国に迷い込む高揚感」を求める個人旅行者にとっては、少し物足りなさを感じる理由かもしれません。

そこで今回は、元在住者の視点から、確実におすすめできる「日本人がまず行かない、けれど最高に刺激的なスポット」を厳選しました。

観光客向けのデコレーションが剥がれ落ちた、素顔のバンコク。

私が在住時代に魅了され、今でも大切にしている秘密の場所を、皆さんの旅のしおりにこっそり書き加えたいと思います。

普通の旅行では決して辿り着けない、バンコクの深部へ。

元住人だからこそ知っている、特別な場所へ出かけてみませんか?

① クディ・チーン地区 (Kudee Jeen):時が止まったポルトガルの面影

チャオプラヤー川を渡り、喧騒のバンコク中心部から西側のトンブリー地区へ。

そこに、私が在住時代、心を落ち着かせたい時によく訪れた小さな集落があります。

「クディ・チーン」と呼ばれるこの場所は、18世紀のトンブリー王朝時代から続く、ポルトガル系の子孫たちが暮らす歴史的なコミュニティです。

迷路のように入り組んだ細い路地に一歩足を踏み入れると、そこには高層ビルの影一つない、驚くほど静かな時間が流れています。

まず目に飛び込んでくるのは、川沿いにそびえるルネサンス様式の「聖クルーズ教会」。

その周囲には、キリスト教の象徴である十字架と、タイ伝統の仏教寺院、さらにはイスラム教のモスクが隣接し、多宗教が共生してきたこの土地特有の寛容な空気が満ちています。

この地区を歩く際、鼻をくすぐる甘く香ばしい香りに気づくはずです。

その正体は、この街の名物「カノン・ファラン(ポルトガル菓子)」。

日本でいう江戸時代、ポルトガルから伝わった製法が今も守り続けられています。

小麦粉、卵、砂糖だけで作られるこの焼き菓子は、外側はサクッと、中は驚くほど素朴で優しい味わい。

保存料を一切使わない、この地区の数軒の家でしか作られていない貴重な味です。

観光客が押し寄せる有名な水上マーケットとは対照的に、ここには「見せるための演出」がありません。

軒先に干された洗濯物、道端で昼寝をする猫、そして古びた木造家屋から聞こえてくる生活の音。

元住人の私から見ても、これほどまでにバンコクの多層的な歴史を、肌感覚で、かつ静かに味わえる場所は他にありません。

便利なBTSサパーンタクシン駅から船で渡るという少しの「冒険」が必要な立地ゆえに、日本人旅行者の姿を見かけることはまずありません。

自力で動く個人旅行者だからこそ辿り着ける、ノスタルジックな迷宮の散歩をぜひ楽しんでください。

② タラート・プルー (Talat Phlu):線路際で味わう、バンコク屈指の「食」の聖域

バンコクの西側に位置する「タラート・プルー」は、私が在住時代、本当に美味しいローカルフードを求めて何度も通った場所です。

ここは、有名な「メークロン線路市場」のような観光地としての華やかさはありません。

しかし、それゆえに「今も現役で動いている生活の鼓動」を最もダイレクトに感じられるエリアでもあります。

最大の特徴は、タイ国鉄マハーチャイ線の線路と、市場や家々が驚くほど密着している光景です。

列車が通るたびに、屋台のパラソルを畳むこともなく、ごく自然に人々の日常が一時停止し、列車が通り過ぎればまた何事もなかったかのように商売が再開される。

その光景は、観光客に見せるためのパフォーマンスではなく、100年以上続いてきたこの街の規律そのものです。

食通の間でこの街の名を不動のものにしているのが、タイ風ニラ饅頭「クイチャイ」です。

タラート・プルーはバンコク屈指のクイチャイ激戦区として知られ、線路沿いには何十年も続く老舗が軒を連ねています。

特に、夕方になると現れる「台車に乗った行列店」のクイチャイは絶品。

薄い皮の中にぎっしりと詰まったニラの風味と、秘伝の黒いタレが絡み合う瞬間は、一度味わうと忘れられません。

元住人の私ですら、あの味を求めてわざわざBTSを乗り継いで出向いたものです。

さらに、このエリアには100年以上の歴史を持つ木造の駅舎や、ラーマ5世時代を彷彿とさせる古い建築物が点在しています。

再開発が進むスクンビットエリアでは決して見ることができない、セピア色のバンコクがここには残っています。

日本語のメニューも、日本人観光客の姿もほとんどありません。

聞こえてくるのは列車の警笛と、屋台の主人が鍋を振る音だけ。

BTSタラート・プルー駅から徒歩、あるいはバイタクで数分の場所にあるこのエリアは、個人旅行者が「タイの日常」の奥深さに触れるための、最高の舞台と言えるでしょう。

③ ワット・サームプラーン (Wat Samphran):天空へ昇る龍の背中を歩く

バンコク中心部から西へ車を走らせること約1時間。

ナコーンパトム県ののどかな風景の中に突如として現れるのが、通称「ドラゴンテンプル」こと、ワット・サームプラーンです。

元在住者の私でも、初めてその姿を目の当たりにした時は、そのあまりのスケールと独創性に言葉を失いました。

地上17階建て、鮮やかなピンク色をした円筒形のビル。

そこに巨大な龍が、まるで意志を持っているかのように力強く巻き付いている。

そのビジュアルの破壊力は、世界中の珍スポットを巡る旅人たちの間でも語り草になっています。

しかし、公共交通機関でのアクセスがやや難しく、一般的なツアーの旅程にはまず入らないため、訪れる日本人は今もなお極めて稀です。

この寺院の真骨頂は、龍の「体内」に入ることができる点にあります。

ビルの中央には、龍の体の一部である中空のスロープが最上階まで続いており、参拝者は龍の背中の中を歩いて登っていくことになります。

窓が少ないため、少し薄暗くひんやりとした空気が流れるスロープをひたすら登る体験は、まるで異世界の儀式に参加しているかのような錯覚に陥ります。

息を切らしながら屋上に辿り着いた先には、龍の巨大な頭部がすぐ目の前に迫る絶景が待っています。

そこから見渡すナコーンパトムの平原と、眼下に広がる寺院の敷地。

そこには、バンコクの喧騒とは無縁の、静謐で神秘的な時間が流れています。

ここは単なる「写真映え」のスポットではありません。

1980年代に建立されたこの寺院には、数字の「80」にまつわる仏教的な意味が込められており、今も地元の人々が熱心に祈りを捧げる神聖な場所です。

個人旅行者がタクシーや配車アプリを駆使してでも訪れる価値のある、タイの宗教観と自由な発想が融合した、バンコク近郊最大のミステリースポットと言えるでしょう。

④ バーン・クライブア (Baan Silapin / Artist’s House):運河のほとりで芸術と静寂に浸る

バンコクには数多くの水上マーケットがありますが、観光客で埋め尽くされた場所を避けたいなら、私は迷わず「クローン・バン・ルアン」をおすすめします。

その中心に位置するのが、築100年以上の歴史を刻む木造民家を再生した「バーン・クライブア(アーティストハウス)」です。

元在住者の私が、バンコクの騒々しさに少し疲れたとき、心の洗濯をするために通った隠れ家のような場所です。

運河の上にせり出すように建てられたこの家屋は、現在はアートギャラリー兼カフェとして一般に開放されています。

一歩中に入れば、懐かしい木の温もりと、地元アーティストたちが手がける色彩豊かな作品が出迎えてくれます。

ここでの醍醐味は、何と言っても「何もしない贅沢」を味わうこと。

運河を眺めるデッキに腰を下ろし、冷たいコーヒーを片手に、時折ボートが波を立てて通り過ぎるのをただ眺める。

そのゆったりとした時間の流れは、大都市バンコクにいることを忘れさせてくれるほど贅沢です。

また、ここでは今では大変希少となった「タイ伝統の人形劇」を鑑賞することができます。

黒い衣装に身を包んだ複数の演者が、一体の人形をまるで生きているかのように操る姿は、神話の世界を目の前に現出させるような迫力があります。

週末の午後に不定期で開催されるこの劇は、無料(ドネーション形式)で見ることができ、地元の人々と共に息を呑むひとときは、単なる観光を超えた文化体験となるはずです。

さらに、この家の敷地内にはアユタヤ時代から残るという古い仏塔がひっそりと佇んでおり、この場所が刻んできた長い年月を物語っています。

大規模な観光地のような派手なアトラクションはありませんが、風に揺れる木々の音と、水面のきらめき、そして芸術の香りに包まれるこの場所は、個人旅行者が「バンコクの原風景」に出会える数少ない聖域です。

⑤ ナイチンゲール・オリンピック (The Nightingale-Olympic):1960年代に置き去りにされた、タイ最古のデパート

バンコクの旧市街、パフラット地区の角に、まるで周囲の都市開発を拒むかのように佇むコンクリートの建物があります。

それが「ナイチンゲール・オリンピック」です。

1960年代、タイで最もモダンなデパートとして華々しくオープンしたこの場所は、驚くべきことに、現在も当時のままの姿で営業を続けています。

一歩足を踏み入れると、そこには強烈な違和感と郷愁が入り混じった空間が広がっています。

ショーケースに並んでいるのは、半世紀以上前のビンテージなスポーツ用品、弦が切れたままの楽器、そして今では動くかどうかも分からない巨大なレトロ美容機器の数々。

それらは商品として陳列されているのか、あるいは単にそこに「置かれている」だけなのか。

薄暗い店内に降り積もった埃と、かつての栄華を物語るマネキンたちが醸し出す雰囲気は、デパートというよりは、もはやシュルレアリスムの博物館のようです。

元在住者の私でも、ここを訪れるたびに「本当に現代のバンコクにいるのだろうか」と足元が揺らぐような錯覚に陥ります。

最新のショッピングモールが次々と誕生する一方で、こうした場所がひっそりと生き残り続けているのが、バンコクという街の底知れない奥行きです。

店内に流れる沈黙と、古い建物特有の匂いは、キラキラした観光スポットに飽きた個人旅行者の好奇心を、これ以上ないほど強く刺激するでしょう。

ここには、いわゆる「お土産」に適したものは一つもないかもしれません。

しかし、窓から差し込む光に照らされた古い看板や、時代から切り離された商品群を眺めていると、写真や言葉では説明しきれない「バンコクの記憶」を共有しているような不思議な感覚になります。

観光客はおろか、地元の人ですら滅多に入ることのないこの場所は、効率や便利さを求める旅では決して出会えない、唯一無二のデッドストックな体験を約束してくれます。

⑥ バーン・カチャオ (Bang Krachao):大都会の真ん中に浮かぶ「バンコクの緑の肺」

最後にご紹介するのは、バンコクを流れるチャオプラヤー川が大きく蛇行した場所に位置する、広大な中州のようなエリア「バーン・カチャオ」です。

地図で見ると、高層ビルが立ち並ぶスクンビットエリアのすぐ南側にありながら、ここには驚くほど手つかずの自然が残っています。

その形が肺の形に似ていること、そして大都会の空気を浄化するほどの樹林が広がっていることから、「バンコクの緑の肺(Green Lung)」という愛称で親しまれています。

ここへのアクセス自体が、ちょっとした冒険の始まりです。

クロントーイ桟橋から小さな渡し船に乗り、わずか数分。

対岸に降り立った瞬間に、排気ガスの匂いは消え、むせ返るような緑の香りと鳥のさえずりに包まれます。

元在住者の私が、「バンコクの喧騒に飲み込まれそう」と感じたときに、逃げ込むように訪れていた究極のリフレッシュポイントです。

バーン・カチャオでの定番の過ごし方は、船着き場で自転車を借りることから始まります。

迷路のように張り巡らされた高床式の細い小道を、レンタサイクルで走り抜ける快感は格別です。

両脇にはマングローブの森やヤシの木が茂り、時折現れるローカルな高床式の民家からは、のんびりと暮らす人々の笑顔が見えます。

特に「シーナコン・クエンカーン公園」は、美しい池と緑道が整備されており、都会の真ん中にいることを完全に忘れさせてくれるでしょう。

週末には「バンナムプン水上マーケット」も開催され、地元の人々に混じって珍しい野草の天ぷらやローカルスイーツを楽しむこともできます。

ここは「観光地」として整備された場所ではなく、あくまで住民の生活と自然が共生している場所。

そのため、日本人旅行者の姿はほとんど見かけず、聞こえてくるのは風に揺れる葉の音と、自転車のチェーンが回る音だけです。

「バンコクには緑が少ない」と思っている方にこそ、ぜひ訪れてほしい場所です。

スクンビットの喧騒からわずか30分で辿り着けるこのジャングルは、自由な足を持つ個人旅行者にだけ許された、最高の休息の地なのです。

まとめ

「バンコクには、もう見るべき場所なんてない」 もしそう思っている方がいたら、今回ご紹介した6つのスポットを思い出してください。

かつてこの街で暮らしていた私にとって、バンコクの本当の魅力は、きらびやかな寺院や豪華なショッピングモールだけではありませんでした。

それは、偶然迷い込んだ路地裏で出会う人々の笑顔や、100年前から変わらない運河の匂い、そして観光地化されていないからこそ残っている、少し不器用で温かいタイの日常の中にありました。

今回取り上げた場所は、どれも移動に少し手間がかかったり、日本語が通じなかったりと、パッケージツアーのような「至れり尽くせりの安心感」はありません。

しかし、だからこそ自力で辿り着いたとき、その場所はあなたにとって、誰にも教えたくない「自分だけのバンコク」へと変わるはずです。

個人旅行の醍醐味は、自分の足で歩き、自分の五感で街の温度を感じることにあります。

元住人の私が体験した、この街の「深部」が皆さんの旅に新しい彩りを与え、予定調和ではない刺激的な冒険の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

スマホの地図を頼りに、少しだけ勇気を出して一歩先へ。

あなたがまだ知らないバンコクが、そこで静かにあなたを待っています。

それでは、素晴らしいタイの旅を!

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